« 【書評】北浜邦夫監修、高田公理・睡眠文化研究所編『夢 うつつ まぼろし――眠りで読み解く心象風景』(インターメディカル、2005年) | トップページ | 書評一覧(英文タイトル込み) »

2009年5月14日 (木)

万能細胞に関する最近のニュース

 本blogでも、何度か取り上げている 万能細胞(ES細胞、iPS細胞)。今年(2009)に入ってからも万能細胞に関するニュースが頻繁に報じられている。以下に、朝日新聞の記事をいくつか紹介しよう。

■ガードナー国際賞の受賞

 1つ目は、ガードナー国際賞に、京都大iPS細胞研究センターの山中伸弥教授と京大大学院理学研究科の森和俊教授が選ばれたことだ。ガードナー賞とは、医学の分野で大きな発見や貢献をした研究者に贈られる国際賞で、歴代受賞者の4人に1人はノーベル賞を受けており、米ラスカー賞と並び化学者の「登竜門」とされる賞だ。日本から過去6人が受賞している。

 山中教授は06年、マウスの体細胞からほぼすべての細胞に分化する能力を持つiPS細胞(人工多能性幹細胞)を作ったと報告。翌年にはヒトでも成功した。森教授は93年に細胞内の小器官「小胞体」で、過って作られた不良品のたんぱく質を感知するセンサー分子を発見し、不良品がどう処理されるかを明らかにした。

 山中教授は06年にiPS細胞をマウスからつくったと発表して以降、受賞ラッシュが続いている。京都大によると、4月1日現在、紫綬褒章を含めると23にのぼる。山中教授は会見で「iPSといえば日本となるよう、5年後、10年後に向けて頑張りたい」と話した。10月にカナダ・トロントで授賞式がある。

■ES細胞研究への支援

 2つ目は、アメリカでオバマ大統領が、ES細胞の研究に連邦政府予算を使えるようにする方針を決めたということ。ES細胞は受精卵を壊して作る為、宗教的な反発が強く、新保守主義の立場にあったブッシュ前政権はその研究を大きく制限していた。しかし、オバマ大統領は、「政治や宗教にゆがめられない健全な科学政策」を目指している。

 一方、日本の現状について、米国のような宗教的背景がないのに、研究機関と国の「二重審査」が行われるなどヒトのES細胞を使うには規制が厳しい為、研究の妨げになっているとの指摘もある。iPS細胞での成果を生かすためにも、研究の基礎固めが大切だ。

■より安全な万能細胞の作成

  3つ目は、遺伝子を使わずにマウスの新しい万能細胞(iPS細胞)をつくることに米独チームが成功したという最新のニュースだ。遺伝子を使うと細胞ががん化する恐れがあり、使う遺伝子を減らす世界的な開発競争が続いていた。

 この細胞を約1カ月培養すると、形や性質が万能細胞に似た細胞ができた。それをマウスの受精卵に入れ、この細胞が心臓や肝臓、生殖細胞などさまざまな細胞になりうることを確認。チームは、たんぱく質(protein)の頭文字をとり、この細胞を「piPS細胞」と名づけた。 

 しかし、今回の方法はまだ動物実験の段階で、ヒトの細胞でも可能なのかを含め、安全や安定性の検証を重ねる必要がある。 

■万能細胞の実用化に向けて

 このように、万能細胞をとりまいている状況は日々変化しており、こちらのblogで初めて紹介した頃に比べると、驚くほど状況が変わっている。特にES細胞研究に対する連邦政府予算の使用など、国をあげて研究への支援を始めるアメリカの現状には目を見張るものがある。

 現在では、ES細胞に関しては倫理的な問題は残ってはいるものの、心臓や肝臓、生殖細胞などさまざまな細胞になりうるiPS細胞の実用化に向けて国や研究機関が協力しあって進んでいくべきだろう。

(南山宗教文化研究所研究員・粟津賢太、「科学・こころ・宗教」プロジェクト担当・細江奈々)

|

« 【書評】北浜邦夫監修、高田公理・睡眠文化研究所編『夢 うつつ まぼろし――眠りで読み解く心象風景』(インターメディカル、2005年) | トップページ | 書評一覧(英文タイトル込み) »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/203998/45010982

この記事へのトラックバック一覧です: 万能細胞に関する最近のニュース:

« 【書評】北浜邦夫監修、高田公理・睡眠文化研究所編『夢 うつつ まぼろし――眠りで読み解く心象風景』(インターメディカル、2005年) | トップページ | 書評一覧(英文タイトル込み) »