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2009年3月 6日 (金)

脳と「こころ」と瞑想

■脳の機能と瞑想の関係
 本ブログにおいて、以前より何度か取り上げている「脳とこころ」。 このトピックに関する新聞記事を調べていたところ、瞑想をすることで脳に様々な変化が起こるという記事があることが分かった。

■深い腹式呼吸で心と体がスッキリ
 2008年8月20日付け『読売新聞』では、瞑想がどのような影響を脳に及ぼすかを紹介している。
 記事によると、現代社会を生きている中で、知らず知らずのうちに蓄積した心身の“ゆがみ”を正す手段として、坐禅が注目されているとのこと。瞑想のメカニズムに詳しい東大医学部准教授の熊野宏昭氏(ストレス防御・心身医学)は、「脳科学の視点から見ても大きなリラックス効果がある」と坐禅の効用を説明する。

 学生時代から経験を積んできた熊野氏によると、坐禅をしている最中、心身には不思議な変化が表れるとのことで、座った直後は、「きちんと座れているか」「うまく呼吸できているか」など、何らかの対象に注意が集中しがちだが、しばらくすると、「空気や風と一体になったような感覚」に包まれるのだという。リズミカルで深い腹式呼吸を続けるうち、次第に呼吸していること自体も意識しなくなる。「この心地よく自然に呼吸している状態がカギ」と熊野氏は話している。
 この時、脳内では、神経伝達物質「セロトニン」の分泌が活発化している。この物質には、うつ状態や興奮状態などの感情の揺れを制御する働きがあり、心のバランスを保って「中庸」の状態をつくるのに役立つ。脳幹の中心部にあるセロトニン神経核で分泌され、脳内全体へと広がっていくとのことである。
 実証例の一つが、東邦大医学部教授の有田秀穂氏(統合生理学)が学生らを対象に行った実験。深い腹式呼吸を20分続けた後の心理テストでは、不安や緊張の点数が下がり、活力のレベルが上がったという。また、脳波を測定すると、目覚めている時に出るベータ波に混じり、リラックス時に現れるアルファ波も多く見られたそうである。
 これらは坐禅の深い腹式呼吸で、心と体がスッキリとしてくる証拠だという。

■瞑想で増す 脳の厚み
 翌日の8月21日のテーマは、前日に続いて瞑想と脳の関係だ。瞑想によって実際に脳の容量が増えたという研究の紹介である。
 坐禅など瞑想の効用に関して、世界中で研究が行われているという。1990年代からは脳画像を用いた研究が発表されるようになった。前述の熊野宏昭氏が特に注目するのは、2005年の米国の研究論文だ。
 坐禅と同種の瞑想を10~20年間続けている人と一般の健常者の脳の画像を、磁気共鳴画像(MRI)を使って比較したデータがある。画像処理をしたうえで大脳皮質の厚みを比べてみたところ、2か所で明らかに厚みが増していたという。「脳が活性化した部分で、血流量やエネルギーの消費が多くなり、容量が増えたという証拠」と、熊野氏は解説する。
 厚くなっていたのは、「島(とう)」と呼ばれる部分。体の内部の変化を感じ取り、リラックスしている感覚や呼吸の状態などを受けて、快・不快などの「気分」をつくることにかかわる場所だ。
 もう1か所は、「背内側前頭前野(はいないそくぜんとうぜんや)」。ここは、自分の思考や感覚を客観的に観察することに関係する部分とのこと。「自分が今、こう考えている」「こう感じている」と認識することで、初めて他人に共感することも可能になる。パニック障害などの患者はこの部分が逆に委縮しているという。
 このことから、熊野氏は3つの可能性を考えていると記事では紹介されている。1つは、前頭葉の老化に伴う脳の委縮を予防できるということ。2つ目は投薬が中心のパニック障害などの治療に利用できるということ。そして3つ目は、方法によっては、新たな能力が開発できるということだ。 ただし、精神疾患を抱えている人は、試みる前に専門医に相談することが必要だという。たとえばうつ病の人は、坐禅をしていて否定的な雑念につかまってしまう恐れもあるからである。

■脳と瞑想の密接な関係
 日々のストレスを少しでも癒すのが目的で始めた瞑想が、脳を活性化させて、リラックス効果を生み出しただけでなく、脳の容量までが増えた。これらの瞑想が脳に与える影響を利用すれば、将来的には病気の治療などにも関わっていける可能性もあるだろう。人の「こころ」の持ちようによって「脳」は無限の働きをしてくれるように思えてならない。
(「科学・こころ・宗教」プロジェクト担当・細江奈々、南山宗教文化研究所研究員・大谷栄一)

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