「科学と仏教の接点」の探索
「著者は近年の脳科学の進展に大きな期待を抱くのだが、[中略]『脳の直覚が生み出す完全なる神の世界が、現実観察によって次第に修正されていく』ことが『科学の人間化』であり、それが釈迦の悟りという神秘性を排した仏教の姿勢と合致するのであり、今後、仏教と科学は歩みを共にしていくだろうというのが著者の基本的主張である。」
佐々木氏のこうした姿勢に基づき、この講演会でも、両者の対話を通じて、「科学と仏教の接点」が探索された講演会であったことが、『朝日新聞』の記事からわかる。
□「自己の揺らぎ」や客観的な「真理の探究」
残念ながら、私(大谷)は、この講演会を拝聴できなかったのだが、『朝日新聞』の記事によれば、藤田氏は認知科学の立場から、人間は自分の意思だけで物事を判断するのではなく、無意識に支配される部分もあり、そこでは「確かだったはずの“自分”が揺らいでいる」ことを指摘し、一方、佐々木氏は、主観的な認識が(仏教の基本的世界観である)苦しみの根源にあり、「主観を排し、客観性を重視する姿勢は、まさに自然科学と同じです」と発言したことが紹介されている。
「自己の揺らぎ」や客観的な「真理の探究」という点で、「科学と仏教の接点」があるという内容で、記事はまとめられている(惜しむらくは、「心」へのアプローチが両者の立場によって、どのように異なるのかも知りたかった)。
□科学者と仏教(宗教)研究者の学際的交流
本プロジェクトでは、「こころ」をキー・コンセプトとして、「科学と宗教」の関係の検討を行っているが、この講演に見られるように、「自己の揺らぎ」や「真理の探究」という論点も非常に重要であることがわかる。
今後、「科学と仏教(宗教)の接点」を探索する上で、有用な論点やアプローチをそれぞれの立場から提案、提示することが大事であることは言うまでもないが、さらに言えば、(この講演会や本プロジェクトのように)「科学者と仏教(宗教)研究者の学際的交流」が不可欠であることも付け加えておきたい。
(南山宗教文化研究所研究員 大谷栄一)
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