« 韓国でのGPSS Workshopのレポート(1) | トップページ | 韓国でのGPSS Workshopのレポート(3) »

2009年1月15日 (木)

韓国でのGPSS Workshopのレポート(2)

<Opening presentation>

□Paul SWANSON先生の報告
Img_0511  最初に、西江大学のBernard SENECAL先生より、今回のWorkshopの主旨説明があり、次いで、南山宗教文化研究所(Nanzan Institute for Religion and Culture)のPaul SWANSON先生によって、“Brain Science and Religion: What Are the ‘Big Questions’? ”と題するオープニングを飾る発表が行われた。
 

 SWANSON先生の報告は、今回のWorkshopの目的や課題を提起する基調講演というべき内容であった。
 まず、John Templeton Foundation のGlobal Perspectives on Science on Spirituality (GPSS) projectと、そのプロジェクトの一環として行われている南山宗教文化研究所のプロジェクト「科学・こころ・宗教」に関する説明がなされた上で、今回のWorkshopの目的と課題として、①“big questions”とは何か? ②「こころ」と人間経験の言語の関係、③二つの正反対のアプローチが提示された。
 Templeton Foundation の「科学と宗教」の探求は、「big questions」に応じるためになされており、その「big questions」とは、「意識とは何か?」「『私』と言った場合の意味は?」「近年の脳科学の研究の道徳的な含意とは何か?」「人類にとって、自己意識はどのように生じるのか?」「『mind』『heart』『spirit』『kokoro』とは何か?」といった問題群を指している、とSWANSON先生は説明。
Img_0475_5    そして、「mind」「heart」「kokoro」をめぐる英語、サンスクリット語、日本語、中国語の単語を示しながら、「こころ」をめぐる各言語の多義性を示した後、二つの正反対の立場を提示した。それは、①mind/spirit/soul とbody/brain/matterのような、「絶対的二元論(absolute dualism)」であり、②brain/bodyの物理的な活動にすべてを還元するような、「完全なる還元主義(complete reductionism)」である。それぞれの要素は独立的な存在なのか、人間の自由意志や道徳的応答のような「私」の経験を説明できるのかどうかが問題になり、これらの問題群を克服する「第三の道(third way)」があるのかどうかが、参加者に提起された。
 そして、最後に、脳科学が私たちに意識や宗教、「mind」「heart」「spirit」「kokoro」の伝統的な理解について、何を語ってくれるのか? 脳科学と宗教はお互いに何を与えあうのか? 脳科学の知見は宗教的信念に影響を与えるのか? 宗教的信念は科学者としてのあなたに何を問いかけるのか? さらには、「科学」は「宗教」から何を学ぶのか? 「宗教」は「科学」から何を学ぶことができるのか? 私たちは「科学」から何を学ぶことができるのか? という「big questions」が示され、SWANSON先生の発表は終了した。
 スワンソン先生の提示した「絶対的二元論(absolute dualism)」と「完全なる還元主義(complete reductionism)」に対して、脳科学や宗教がどのように対応し、また、その対応に際して、脳科学や宗教はどのようにコラボレートできるのかが、今回のWorkshop全体を通じての一大テーマとなった。
  
□質疑応答
 質疑応答では、心身二元論の問題を克服するための「第三の道(third way)」「中道(middle path)」の可能性について、キリスト教神学、仏教学、思想史、神経科学等の多様な視点からの議論がなされた。
 例えば、キリスト教神学を専攻するKEEL Hee-sung先生は、心身二元論はギリシアのプラトニズムからキリスト教神学に持ち込まれたことや、神学上、トマス・アクィナス(Thomas Aquinas、1225頃~1274)によって、心身二元論は発展をみたことを指摘し、アクィナスにおいては、魂(soul)は「身体の一種(form of a body)」として言及され、人間の精神(psyche)の明確な一部分として永続すると認識されていたと述べるなど、キリスト教神学における魂の位置づけに関する説明を行った。そして、キリスト教的人間学における「魂についての言説」はあいまいなままで、神学上の解釈は、二元論と還元主義の間で繰り返される議論を克服する「第三の道」となりえていないという。
 このKEEL先生の発言が呼び水となり、さまざまな意見が交わされたが、とりわけ、人間における意識の発生や進化論の評価をどのように考えるのかが、ポイントとなった。
 さらには、「こころ(mind)」「魂(soul)」「人間の精神的要素(spiritual element in humans)」といった概念の歴史的な起源についても議論は及び、前歴史的な人間の意識の進化は、個人の死の意識化に関連したり、いくつかの理由による脳への刺激によるのではないかとの意見が出された。
 以上、Opening presentationでは、専門用語の規定、認知的な二元論(こころと身体)と実体的な二元論(魂と身体)の区別の明確化、意識発生の解釈モデルの問題、そしてworkshop全体の方向性やパラメーターが議論された。

|

« 韓国でのGPSS Workshopのレポート(1) | トップページ | 韓国でのGPSS Workshopのレポート(3) »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/203998/43748862

この記事へのトラックバック一覧です: 韓国でのGPSS Workshopのレポート(2):

« 韓国でのGPSS Workshopのレポート(1) | トップページ | 韓国でのGPSS Workshopのレポート(3) »