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2008年7月24日 (木)

茂木健一郎を読む(4)――読後感:科学と宗教の同時相即性、そして〈美しく〉描写することの大切さ

□ミッシング・リングとしてのクオリア
Gpss080724 筆者が読んだ茂木氏の作品は、以前このブログで取り上げた小さな論考を除けばこの三冊に過ぎず、氏のクオリア論の原論ともいえる『脳とクオリア』は未読である。しかし、科学と宗教をむすぶ際に求められてきたミッシング・リングのひとつがクオリアであることは否定できないし、また、輪廻転生的な人間観を持たずして、言葉を通じて全人類的な課題である見えざるものを見る志向性の探求を試みる姿勢には、キリスト教信仰をもつ筆者として共感するところが多かった。

□新たな親宗教的神秘の出現
 そしてなにより「思い出せない記憶」や「実現されなかった可能性」というたぐいの言葉から、科学と宗教をつなぐ(クオリアならぬ)非相互排他的な仕組みを予想させる。思考を含むあらゆる言語行為は一つの表現の採択に基づくものである以上、かならずその裏に選択/成就されなかった可能性が(通常の場合)複数想定される。その際言葉と不可分な無意識が共鳴して、新たな神秘を潜勢的に醸し出す。よって思考や実験の結果なんらかの科学的事実を発見し、それを言語的に表現した際には、同時相即的に新たな神秘がひそかに発生していると言える。さらに神秘性の表現において宗教が長らく主役を占めてきたことを考え合わせると、その神秘を親宗教的神秘と呼ぶこともできよう。

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2008年7月18日 (金)

茂木健一郎を読む(3)――『脳と仮想』(新潮社、2007年〔原著:2004年〕)

□仮想の背景にある切実さ
Gpss080718  『脳の中の人生』の一年前に書かれたもので、小林秀雄賞受賞作。新潮文庫版の帯では「代表作」とのことである。
 本書において茂木氏は、「近代における人間の公式的世界観、宇宙観」と「必死で闘った」小林秀雄の講演テープに感じ取れる質感(クオリア)を手掛かりに、「この世界のどこにも存在しないものたちを思い描くことなしでは、おそらく私たちの魂はこの世界の現実に堪えられない」ことを示唆し、「目に見えないものの存在を見据え、生命力を吹き込み続けることは、それこそ人間の魂の生死にかかわること」とを主張する。これはまさに「神」や「仏」といった超越者(超越性)の実在に基礎をおく宗教の問題意識に一致する。小林秀雄にとどまらず、ワーグナー柳田國男といった、目に見えない仮想にこそリアリティを感じ取った人々は、仮想の背景にある切実さを感得しえたのであると主張しつつ、いまではそうした(語義的には矛盾する)〈仮想の現実性〉は、思想や文芸にとどまらず、たとえばゲームに熱中する際のクオリア体験に観察できると茂木氏は言う。

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2008年7月 9日 (水)

茂木健一郎を読む(2)――『脳の中の人生』(中央公論新社、2005年)

□〈脳を踏まえて人生へ〉
Gpss080709_2   「まえがき」において茂木氏は「基礎医学」に対して「臨床医学」があるように、脳科学に関しても「臨床脳科学」があってもよいと語り、その中核に根差す発想として「脳も大切だが、人生も大切である」という。つまり茂木脳科学においては〈脳から人生へ〉、より正確にいえば〈脳を踏まえて人生へ〉という道筋が想像されていることになる。脳の構造と機能のいずれに重きを置くかはともかく、茂木氏は人生という〈価値〉の次元にその思考を収斂させる。同書のはじめの二章でその流れが巧みに描写される。

□「思い出すこと」
 第一章のトピックは「思い出すこと」である。「想起」といった玄人臭い概念を使わないところが自らの役目を心得ているようで、好ましい。

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2008年7月 1日 (火)

「宗教と社会」学会第16回学術大会のテーマセッションの報道

 去る6月15日に南山大学で開催された「宗教と社会」学会第16回学術大会で実施されたテーマ・セッション「日本における「科学と宗教」の対話の意味を問い直す」の概要が、『中外日報日報』2008年6月26日号で紹介されました。
 詳しくは、こちらのPDFファイルをご覧ください。
 「16.pdf」をダウンロード
 

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