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2008年5月16日 (金)

万能細胞についての最近のニュース

 以前、こちらのブログでも取り上げた万能細胞「人工多能性幹細胞(iPS細胞)」について新たなニュースが出てきた。そこからは科学というものが、ただ漫然と数学の証明問題を解いているうちにおのずと進歩しているといったようなものではなく、実利という非科学的要因によって強力に影響される事態が読み取れる。
 4月20日付けの中国新聞の社説によると、万能細胞については山中伸弥教授(京都大学)らの研究が他国に先行していると思われていたが、複数の国が特許出願している可能性が明らかになった。以下に記事の概要を紹介しておこう。

□万能細胞の特許出願
山中教授らが世界に先駆けて万能細胞の作製に成功したと発表したのは昨年11月のことで、7月に特許出願もしていた。ところがドイツ系製薬会社のバイエル薬品も同じく成功したと発表し、しかも特許出願は昨年春ごろと思われる。さらに米国からの出願もあるようだ。
 特許に関する基本原則は、同内容の申請に対しては、先に出願した方が権利を得るというものである。しかし、この万能細胞は一般的な新案特許の事例とは異なり、多様な医療応用が可能となる万能細胞の開発であり、人類の医療さらには福祉厚生に与える影響は多大と思われるため、一社だけが今後の研究や商品化について排他的に権利を独占することは望ましくない。

□国を挙げた支援態勢
 京都大の成功を受けるかたちで、日本政府は機敏な対応をとり、研究費増額を決定した。五年間で百億円に達す大規模な戦略となっている。資金援助のみならず、研究者間の連携組織を作り上げる点でも支援が行われる。京都大に加え、すでに研究を開始している東京大、慶応大などをからめて、国を挙げた支援態勢のもと万能細胞研究における主導権の確保を目指す政策になっている。

□海外における急速な研究体制の整備
 一方、海外に目を転じれば、急速に研究体制の整備が進められている。もちろん山中教授はこのような競合状況を事前に予測し、マウスでのiPS細胞作製に成功した際に、他の動物にも共通する基本部分に関してはすでに特許を出願済みだと語っている。しかし外国企業が特許権を得た場合、新薬の製品化にあたり高額なライセンス料が課せられ、医療費が急騰する事態も予想される。
 
□国家や企業のエゴを抑えるに足る発想とその制度化
 以上が記事の要旨である。万能細胞の作製に成功という成果は、これまでの医療技術では治療が困難であった分野においては非常に明るいニュースであった。病気に苦しむ人々を助けたいという気持ちは、どの国の医療従事者、研究者でも同じであろう。それらを考えると、研究成果については、基礎的な部分だけでも、特許の有無に関わらず共有することが出来ればと思う。そのためには国家や企業のエゴを抑えるに足る発想とその制度化が強く望まれる。しかしその実現には多くの困難が予想される。今後の行く末を見守りたい。

(「科学・こころ・宗教」プロジェクト担当・細江奈々、南山宗教文化研究所「科学と宗教」プロジェクト研究アシスタント・寺尾寿芳)

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