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2008年5月 7日 (水)

“Creation Museum”「創造博物館」を訪ねる(スワンソン、ポール)

 以前、寺尾研究員による“Creation Museum” (「創造博物館」)の記事(→こちら)を掲載しましたが、今回は、実際に“Creation Museum” (「創造博物館」)を訪問したポール・スワンソン南山宗教文化研究所所長のレポートを掲載します。(管理者)

 3月末に米国を訪問したが、たまたまケンタッキー州北部にある “Creation Museum” (「創造博物館」)を訪れる機会があった(→こちらを参照)。「若い地球」創造論の立場を「科学的」に証明できるとし、教育向けの展示や映画や講演会を提供する場として2007年に創立された施設である。
Cimg1980  まず、目立つのは恐竜の模型で、入り口の外まわりをはじめ(写真1)、施設内のいたるところに登場する。もっとも目立つのは場内に入って間もないところに、恐竜と人間の子供たちが仲良く一緒に遊んでいる場面である。地球は6,000年前に創造された前提なので、恐竜と人間は共存していたことを表現している(これについてまた後に触れる)。そこから続く掲示版や模型は「歴史の歩み」("a walk through history”)として、「若い地球」と「進化論」の立場を対照的に紹介し、宇宙の始まり(創造)から、大洪水による地球破壊、そして近代の反キリスト教的思想の登場を簡略的に紹介している。

Cimg1955_3 構造としては、「神の語」 (God’s Word)に従うか、「人間の理性」(Human Reason)に惑わされるかの選択が強いられている(写真2, 3)。 「神の語」とは『聖書』(特に「創世記」)を厳密に「歴史」として解釈し、宇宙は約6,000年前に創造されたことをそのまま受け入れることで、「人間の理性」とはこれに反して人間が勝手に想像してつくりあげた「進化論」のような反キリスト教的な思想を受け入れることで、現代社会が悪化し、様々な問題を抱えるようになっている、といった議論を展開している。Cimg1957_8 恐竜の模型や、ノアの箱舟の展示など、眼を引く立派な出来上がりだが、その根底にある思想的葛藤が異様に響き、現代米国社会の「文化戦争」(cultural wars)を見事に反映している。
 この施設を訪問して感じた個人的な印象を少し述べたい。まず、科学的に何の根拠もない非歴史的な場面を堂々と展示しているところが異様に感じた。特に人間の子供たちが恐竜と遊んでいる展示物 (写真4)は、まず、(すくなくとも私が知っている限り)人間と恐竜が同時代に共存していた証拠はまったくないはずなのに、『聖書』の狭い解釈にもとづいて想像していることが不自然にみえた。Cimg1975_2 特に、子供たちはどう見ても、日焼けしている現代アメリカの白人にしかみえない。また、恐竜は「人間が罪を犯して堕落するまで、全て菜食者であった」、という主張にはじめて出会った。この論議は、同じく『聖書』の独特な解釈にもとづき、人間が罪を犯す前に動物は殺しあうはずがないという「前提」に立ち、人間が罪を犯すことによって人間だけではなく「自然」も堕落してしまい、その後動物が殺し合い、肉食になった、ということを強調する。これも科学的な根拠がまったくなく、結論を先にだして「証拠」をあとにそれにあわせた、無理な主張としかいえない。
 しかし、もっとも残念なのは、「創造博物館」の主張には、基本的に「科学」と「宗教」の敵対関係が強調されることである。科学的な立場をとるなら「宗教」はでたらめとしかいえない、と主張する科学者がいれば、宗教的立場に反する科学を否定すべきであると主張する宗教者もいる。しかし、「宗教」(「神の語」)と「科学」(人間の理性)は必ず矛盾するものなのか。人間にとって両方が有益な領域であると主張する科学者と宗教者が少なくない。本プロジェクトも、「科学」と「宗教」を両方肯定しながら、その関係と社会的役割を健全なものとして探り続けていきたい。
(南山宗教文化研究所所長、スワンソン、ポール)

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コメント

実際自分の目で見られた体験記は説得力がありますね。
 さて、この博物館にはスワンソンさんのように、基本的発想を共有していない、つまり反対の立場に立つ人も大勢訪れていると思うのですが、なにか「対抗的」な企画、あるいはもっと穏便に「対話的」な試みが訪問した反対者からなされているのでしょうか。
 あるいは、既成の対立構造に収まるものとして、さして知的刺激にはならないため、放置されているのでしょうか。
 とにもかくにもアメリカ的(すぎる)施設の訪問記。とても興味深く、また勉強になりました。ありがとうございました。

投稿: GREG | 2008年5月16日 (金) 17:41

とても雰囲気がわかる、よい記事ですね。じつはわたしは宗教学関係の講義をとある大学にて担当しているのですが、この記事を印刷して、学生に紹介しました(結構、ウケましたよ)。事後承認になって、ごめんなさい。これからもがんばってください。期待しています。(^_^)

投稿: Pseudo-Gregorius Nyssenus | 2008年5月27日 (火) 23:31

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