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2007年12月26日 (水)

アメリカ宗教学会・出張報告(2)

(2)だれの似姿に――ボノボ、罪、超越 (In whose image: bonobos, sin, and transcendence)

議論の背景
Aar3  キリスト教では、人間を動物と明確に区別している。しかし、類人猿の研究がすすみにつれ、人間が特別に高等な生物だとする見方は崩れてきた。この矛盾を神学者はどのように考えたらよいのか。

パネリスト
Jennifer Kile (Princeton Theological Seminary)
Oliver Putz (Jesuit School of Theology)
Nancy Howell (Saint Paul School of Theology)

内容と感想
□「野蛮」な人間?
 神は自身のかたちに人を創られた (God created man in His own image.) ――。
 創世記にあるこの記述は生命体の中でヒトは特別な存在であることを示している。しかし、科学の発達は遺伝子上ヒトに近い類人猿がいることを明らかにした。聖書の内容を事実と疑わない者にとっては悩ましい問題である。それでもチンパンジーなどは攻撃性がみられることから「野蛮」とみなすこともでき、道徳性を兼ね備えたヒトとは峻別できるという見方もとれよう。
 ところが近年の動物行動学や社会生物学の成果は、こうした見方を容易に覆す。とくに20世紀前半に発見されたボノボはヒトよりも平和主義的あることが指摘されている。同時期に戦争に明け暮れた人間とは対照的である。

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2007年12月20日 (木)

単行本『科学 こころ 宗教─科学から見る「こころ」の意義』に関するworkshopの開催

 去る12月8、9日に、南山宗教文化研究所にて、workshopが開催されました。
 今回は、昨年5月に当研究所で開催されたシンポジウムにご登壇いただいた先生方を中心にお集まりいただき、シンポジウムの記録をまとめた単行本『科学 こころ 宗教─科学から見る「こころ」の意義』に関してコメントをいただき、今後のプロジェクトの実施に際して、深めるべきテーマや取り上げるべき課題を問題発見志向的に検討するという参加者限定のworkshopでした。
 参加された先生方から提示されたコメントや議論を通じて明確になったテーマ、論点や課題は、以下のことです。

□「科学と宗教」をつなぐもの
 「科学と宗教」をつなぐものは何か? また、「つなぐ」ということは何を意味するのか? こうした作業が得意な分野は、整理能力・接続能力を有する哲学だが、現在の哲学にそうした作業ができるだろうか。
 今回、あらためて「科学と宗教」の関係という問題設定とそのアプローチの難しさが確認された。また、「科学と宗教」の研究は、これまでキリスト教的な制約が強かったが、日本社会のコンテクストで「科学と宗教」の関係はどのような意味を持つのかを再検討する問題設定が必要であろう。

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2007年12月19日 (水)

ご愛読感謝

 このblogを開設して、ほぼ1年になります。
 最近は、ありがたいことに言及いただく機会も増えました。
 以下、当blogに言及いただいているblogをご紹介させていただきます。

pensie_log 「石炭フェティシズム」→こちら

Karpos. 「19世紀」→こちら

ミュンスター再洗礼派研究日誌 「南山大学宗教文化研究所『科学・こころ・宗教』」 →こちら

 今後ともよろしくお願い申し上げます。(管理者)

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アメリカ宗教学会・出張報告(1)

 前回まで、寺尾寿芳研究員のアメリカ宗教学会参加録を掲載しましたが、同じく、学会に参加した川上恒雄研究員の参加録を掲載します。
 アメリカ合衆国のサンディエゴで11月16~22日に開催されたアメリカ宗教学会(AAR)での「科学と宗教」に関するセクションの記録です。 

Aar1_3はじめに
 アメリカ宗教学会(AAR)には科学・技術と宗教との関係を研究するグループがあり、南山宗教文化研究所の「科学・こころ・宗教」プロジェクトを遂行するにあたり見逃すことのできない学会である。
 今回のAARでは、アメリカではホット・イシューである進化論に焦点をあてたパネルに注目した。とくに、性や道徳性の起源・進化という最近注目を集めているテーマをとりあげた二つのパネルについて報告する。

(1)進化生物学と宗教からみたジェンダーとセクシュアリティ (Perspectives on gender and sexuality: evolutionary biology and religion)

議論の背景
 キリスト教では形式上、ホモセクシュアリティやインターセクシュアリティを認めていない。ダーウィンの進化論をめぐる科学言説においても、「生物学的に」性的中間形態の存在を隠ぺいしているようにも思われる。
 しかし、そのような見方は性的マイノリティを抑圧することに加担しているだけだという見方をとる人が増えていることも事実である。キリスト教神学においてこうした矛盾をどのように考えればよいのか。

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2007年12月13日 (木)

アメリカ宗教学会(AAR)サンディエゴ大会に参加して(5)

□総 評
 本年度のAAR大会では残念ながら素粒子物理学者である三田一郎教授の専攻領域である理論物理学と宗教との関係を直接扱ったセクションはなかった。今年たまたまの現象であるかいなかは安易に断定できないが、昨年度の記憶を辿ってみて該当セッションが少なかったことを考慮すると、やはり物理学は宗教との対話において自然科学側の主役の地位からは退き、いまでは生物学関係がその地位にあることが推定される。
 筆者の考えでは、かつて(つまりポストモダン華々しかった頃)先端的物理学の宗教性を下支えしていたのは、仏教の、たとえば高度な空の理論といった「新・新思想」との類比性だったのではなかろうか。しかし現時点では仏教理論の論理化と西洋世界への紹介はかなり進展し、一段落の気配がある。そのため物理学と科学の対話はそれまで機能してきた推進力を減退させてしまったのではなかろうか。Gpss071212f_2

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2007年12月12日 (水)

Topics in English

Please watch for information in English that will soon be appearing on this blog.Gpss071212_4

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アメリカ宗教学会(AAR)サンディエゴ大会に参加して(4)

□セッション参加
Science, Technology, and Religion Group
Tuesday - 9:00 am-11:30 am
Nina Azari, University of Hawai'i, Hilo, Presiding
Theme: Rethinking Science, Religion, and Their Possible Relations
「科学、宗教、そして両者間に可能な関係を再考する」

Gpss071212a a)参加理由: 非常に基礎的なテーマであり、幅広い視野を獲得するのに有益であろうと考え、参加を決めた。理論物理学的な話題が語られるのではないかという期待もあった。

b)発表概要: まず統括担当者兼司会者であるハワイ大学ヒロ校のNina Azari氏がセッション全体的な目的と問題の枠組みについて解説した。それによると本発表は将来的に一種の「百科事典」を作成するための基礎作業とのことである。そのようなこともあり、問題構制そのものは比較的整理されていたが、各発表者による報告段階での司会がまずく、時間配分が崩壊し、事実上セッションの形態に至らなかったのが残念である。筆者が聴いたのは以下の2発表である。 

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アメリカ宗教学会(AAR)サンディエゴ大会に参加して(3)

□セッション参加
Bioethics and Religion Group
Sunday - 9:00 am-11:30 am
Stephen E. Lammers, Lafayette College, Presiding
Theme: Bioethics and Borderlands

「生命倫理と境界域」

Gpss071212d_4  a)参加理由: かつて核兵器開発にあけくれた時代、倫理の根幹を揺るがせた自然科学は物理学であったが、昨年度のAAR(Washington D.C.)においてもすでに明らかなように、主流はすでに生物学や生命科学に移っていると思われる。しかし、やがて自然科学全体と倫理との関係を構築するにあたり、物理学との関連づけも予想される。このような理由から一見非自然科学的な本セッションへの参加を決めた。

b)発表概要: サンタクララ大学のMargaret R. McLean氏が20世紀のアメリカにおける結核やインフルエンザの流行を跡付けた。すでに前世紀初頭の結核流行の段階から病気は容易に大西洋を往復していたことが判明しており、またインフルエンザに関しては、季節的流行、鳥類による流行、全国的流行などの概念で考察ができる。鳥インフルエンザ(H5N1)については現在ワクチンが存在せず、開発中にとどまっている。この感染症は香港で発生し、WHOの調査に基づけば、2003-7年にわたり335例が報告されており、インドネシアなどのアジア地区での死亡率は約50%であったと発表者は語る。

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2007年12月 4日 (火)

アメリカ宗教学会(AAR)サンディエゴ大会に参加して(2)

□セッション参加
Science, Technology, and Religion Group and Cultural History of the Study of Religion Consultation
Saturday - 9:00 am-11:30 am
Elizabeth A. Clark, Duke University, Presiding
Theme: Soap, Coal, and Rayon: Miraculous Elements of Modern Industry
「石鹸、石炭、レイヨン――近代産業の奇跡的な諸要素」

Aar_2007_san_diego_001_3a)参加理由: 科学はただそれだけで社会と交わるのではなく、技術と結合することで社会化される。アメリカはまさに近代資本主義の最前線であり、科学が宗教を含める市民生活に与えた影響は多大かつ迅速であった。こうした状況の実情を知るべく本セッションに参加した。

b)発表概要: インディアナ大学のKathryn Lofton氏「救いの泡立ち――石鹸の奨励とアメリカ的清潔の道徳文化」の表題で発表を行なった。発表者は、アメリカを代表する洗剤会社P&G(Procter & Gamble)社の歴史を紐解きながら、19世紀のアメリカにおける石鹸の使用にともなう清潔志向が「清潔は信心深さに次ぐ大切なもの」というモットーのもと、軍人さらには白人プロテスタント上流階級において強まった過程を解明した。そのなかで白さは神の恵みや純粋さを象徴し、学校教育で重視されたのみならず、キリスト教の世界宣教のなかで世界各地に輸出されたとし、その一例として日本における白菊への賛美が挙げられた。また古来キリスト教においては肉体を忌避する傾向があったが、近代プロテスタントにおける個人志向が「わたしのからだ」という発想を強めたとされた。

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