« 2007年3月 | トップページ | 2007年7月 »

2007年4月29日 (日)

南山大学ヨーロッパ研究センター主催研究会 今道友信「二十一世紀の課題としてのエコエティカ」 を聞いて

□今道友信氏の「エコエティカ」
Gpss070429b  4月27日午後5時から7時半まで、南山大学にて高名な哲学者である今道友信氏による研究会が開催された。テーマは今道氏が長年追い求めている「エコエティカ」の概要紹介といったものだった。今道氏はすでに『エコエティカ――生圏倫理学入門』(1990年、講談社)という著作を発表しており、評者もその存在は認知していたが、未読のため詳細は知らなかった。今回はじめて著者から直接その概要を聞き、そこから学んだことを簡単に記しておきたい。

□人類性という普遍の「在り処」への問い
 まず今道氏は、エコエティカの基本的な発想は人間学的トポロジーだと主張する。今回の発表では、トポロジーの根拠である「トポス」に関して十分な説明がなされなかったため、はじめのうち評者としてはいささか混乱を覚えた。なぜなら今道氏の発表は総じて空間倫理ではだめで、新しい時間倫理が必要だという主張に収斂するものだったからである。もちろん「トポス」は多様な語義をもち、通常「場所」や「位相」と理解されるものの、それらは単なる空間概念ではない。しかし同時に、単純な時間概念でもない。人権の確立や科学技術の発展、さらには組織的な殺戮がこの人間学的トポロジーの焦点をなすというのが今道氏の主張でもあったので、評者としては「文明論」でよいのではないかと思われた。
 しかし話が行きつ戻りつ進むうちに、このトポロジーがことに倫理を念頭に置いたうえでわれわれ自身の「位置づけ」を問うものとして提起されているらしいと思えてきた。たしかに不可欠の思考過程として、移り行く時代の倫理的要請に応える営みを持ち続けるが、そのなかで自分の足元を見つめて、自らがおかれた立場を見極め、さらにはその倫理的思索の目的として人類性という普遍の「在り処」が問われていたのである。Gpss070429_2

続きを読む "南山大学ヨーロッパ研究センター主催研究会 今道友信「二十一世紀の課題としてのエコエティカ」 を聞いて"

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年4月26日 (木)

シンポジウム「科学・こころ・宗教」の単行本の編集作業進む!

Cover_2  昨年5月12~14日に、南山宗教文化研究所で、シンポジウム「科学・こころ・宗教─科学から見る『こころ』の意義」が開催されました。
(プログラムは、こちらでご覧いただけます。→「gpss.pdf」をダウンロード

 そもそも、このシンポジウムは、下記の趣旨にもとづき、開催されました。

続きを読む "シンポジウム「科学・こころ・宗教」の単行本の編集作業進む!"

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年4月19日 (木)

ES細胞をめぐる「科学と宗教」の問題

 今年(2007年)4月12日の『毎日新聞』に、「ES細胞:米上院で法案可決 大統領は拒否権行使へ」という見出しの記事が掲載されていました。
 以下、その一部分を引用したいと思います。

「米上院は11日の本会議で、難病治療への応用が期待される胚性幹細胞(ES細胞)研究への連邦予算の使用制限を緩和する法案を賛成多数で可決した。下院は1月に同様の法案を可決しており、上下両院で一本化した後、ブッシュ大統領に送付する。これに対し大統領は昨年に続いて拒否権を行使する考えを表明した。保守派に地盤を置くブッシュ大統領と、民主党主導の議会側との生命倫理をめぐる対立がさらに深まりそうだ。」(出典:『毎日新聞』2007年4月12日、URL:こちら

Gpss070419_2  ES細胞とは、胚盤胞(動物の発生初期段階)の一部である内部細胞塊から作られる幹細胞細胞株のことです。無限に増殖させることが可能で、人体についてもさまざまな再生医療への応用が注目されており、パーキンソン病やアルツハイマー病治療にも役立つとされています。
 ただし、人体の場合、ES細胞を取り出す際、ヒト胚が破壊されるため、生命倫理の上でさまざまな問題を引き起こしています。
 アメリカでは、ブッシュ大統領率いる共和党がES細胞研究に反対し、民主党が賛成しています。  

続きを読む "ES細胞をめぐる「科学と宗教」の問題"

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年4月11日 (水)

「心」「脳」「脳科学」という言葉

 独立行政法人日本学術振興会が刊行している『学術月報』という雑誌があります。おそらく、一般の読者の方には見る機会の少ない雑誌であろうと思われます(ただし、購入はできます。こちらを参照)。
 ちなみに、私は、南山大学図書館で閲覧しました。
 その2007年2月号で、「脳と科学」を特集しており、各論考は短いながらも、いずれも読み応えのある内容でしたので、その一部を紹介させていただこうと思います。
060411a_5   目次は、写真をご覧ください(写真をクリックすると、拡大します)。
 ここでは、特集の中の入來篤史先生による「脳科学からのアプローチ」に注目したいと思います。
(ちなみに、入來先生には、昨年10月、当研究所で「知性の神経生物学――象徴思考進化の萌芽を道具を使うサル脳に探る」をご発表いただきました。)

続きを読む "「心」「脳」「脳科学」という言葉"

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2007年4月10日 (火)

【書評】ジョン・ポーキングホーン『科学者は神を信じられるか』

【書評】ジョン・ポーキングホーン著『科学者は神を信じられるか――クォーク、カオスとキリスト教のはざまで』講談社、2001年

目次
第1章 論より証拠?
第2章 創造主である神はいるのか
第3章 この宇宙では何が起こってきたか
第4章 そもそも我々は何者なのか?
第5章 科学者は祈ることができるか
第6章 奇跡をどう考えるか
第7章 ひとつの終末論
第8章 科学者は神を信じることができるか

Gpss070410_1 □聖職者になった物理学者
 著者のポーキングホーンは、相対論的量子力学の創始者であるディラックの弟子にあたり、ケンブリッジ大学で活躍した物理学者であり、引退後は神学を学び、イギリス国教会の司祭となった人物である。近年、日本においても自然科学の専門家が聖職者になるケースが散見されるが、ポーキングホーンはやはり別格の大物であるらしく、彼らの一人に「日本のポーキングホーンですね」と語りかけたところ、大いに恐縮された経験がある。

続きを読む "【書評】ジョン・ポーキングホーン『科学者は神を信じられるか』"

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年4月 3日 (火)

「スピリチュアリティ」をめぐって

□「宗教と科学」の間?
 
まず、次の一節に注目してもらいたい。

「『宗教』の世界観・宇宙観はどうも受け入れにくい。かといって、たとえば、『こころは脳内現象である』と片付けてしまう近代科学の考え方も割り切れなさが残る。わたしたちの多くはそのように感じ、『宗教』と合理主義のはざまのグレーゾンに放り出されている。」

Gpss060403_1  これは、朝日新聞ジャーナリスト学校主任研究員の磯村健太郎氏の新刊『<スピリチュアル>はなぜ流行るのか』(PHP新書)の一節(96頁)である。
 この本は、現在の日本社会で注目されているスピリチュアル現象、スピリチュアル文化を幅広く紹介し、分析した本である。
 取り上げられている対象は、平原綾香さんのヒット曲「Jupiter」、昨年末の紅白歌合戦で歌われた「千の風になって」、江原現象、「ロハス」ブーム、ドキュメンタリー映画『地球交響曲』、ブログ、mixiなど、幅広く、いずれも興味深い。

続きを読む "「スピリチュアリティ」をめぐって"

| | コメント (2) | トラックバック (0)

« 2007年3月 | トップページ | 2007年7月 »